ウェブ屋にとっての理想のCMSとは(OSCに参加して)
オープンソースカンファレンス 2009 Tokyo/Fallに、初日(それも途中まで)だけですが、参加してきました。http://www.ospn.jp/osc2009-fall/
何はともあれ「CMS」カテゴリーの展示が多かったですね。各種のUnixやLinux、多くの自作OSまで含む「OS」カテゴリーと同等の数で、「CMS」と「OS」が二大カテゴリーという印象でした。
CMS関連のセミナーにも3件ほど参加して、CMSのことを色々と考える良い機会になりました。
ということで、このブログの本来の大きなテーマである「ウェブ屋のCMS」の観点から、我々のような中小規模のウェブ屋にとって、どういうCMSが理想的かをちょっと考えてみました。前提としては、「企業サイトの制作・運営を請け負う/ウェブデザイナーがデザイン/企業担当者様が更新する」といったあたりです。
思いつきなので、考慮が足りないところもあるでしょうし、私の想定できない色々なケースもあるでしょうから、感想はもちろん、異論・反論、補足、ツッコミ、その他…、みなさんからコメントいただけると嬉しいです。
サイト制作(編集)作業を変えない・増やさないCMS
サイトの制作は、Dreamweaver等の制作ツールを使ってされていることが多いと思います。(本当かどうか知りませんが、シェア8割とか9割とか言われたりしますし、書店に行っても書籍の数は圧倒的ですので、以下は、Dreamweaverを前提で話を進めさせていただきます)
お客様への確認は、DreamweaverのFTP機能でテストサイトにアップして閲覧していただく。(もしくは、コンテンツ一式を圧縮して送るということも?)チェックバックが返ってきたら、Dreamweaverで修正・アップして再度確認。OKが出たら、DreamweaverのFTP機能を使って、本番アップ。
というような流れかと思います。(FlashやFireworks等も使うとは思いますが、ここではそれらもDreamweaverに含むと考えてください)
ちなみに、ヘッダーやフッター、グローバルメニュー等、複数ページにわたって共通な部分は、Dreamweaverのテンプレート機能やライブラリ機能を使って合理的に管理されているかと思います。(使ったことがない人は使ってみてください。非常に便利な機能ですよ。)
さて、CMSを導入した場合、以下のような部分はお客様に入力していただくことになります。
- 商品カタログ等の定型化されたページなら、各入力項目
- 非定形ページなら、個々のページのタイトルや記事本文
しかし、それ以外のすべての部分、トップページ、ヘッダー、フッター、グローバルメニューはもちろん、コーナー毎のサブメニューやCSS、パン屑リンクや一覧ページのフォーマット、商品カタログ等の定型化されたページのフォーマット、ブランディングページ等の特にデザインが重要なページ、等々…は、我々ウェブ屋が作ってCMSに設定しなくてはなりません。
一般的なCMSの場合、以下のような作業が必要になります。
- Dreamweaverで作ったページから、CMS用の部品を作る。
- 作ったCMS用の部品をCMSに設定する。
- 変更が発生した場合に、以下のどちらかを行う。
- Dreamweaverで変更して、1〜2を繰り返す。
- CMS用部品を直接変更し、CMSに設定する。ただし、(お客様含めて)ページデザインを事前に確認したり、今後、Dreamweaverで編集することは、あきらめる。
わかる人はわかると思いますが、これらは、デザイナー等が、普段やらない(やりたくない)性質の作業です。
つまり、ツールで確実に作業することのできない危険な手作業の上、作業の結果を視覚的に確認できないので、ミスがすぐに顕在化しない可能性があり、慣れていないし、やりたくないので、ミスを起こしやすく、ストレスにもなります。
ですので、
- DreamweaverだけでCMSへ投入できる
- DreamweaverからCMSへ投入するためのツールがある
- DreamweaverからCMSへ投入する作業が簡単
であれば(上から順に)理想に近いCMSと言えるかもしれません。
普通のサイトが、普通に作れるCMS
経験上、たいていのCMSは、実務で使えるようになるまで時間がかかりますし、時間をかけたところで、一人で多数のCMSに精通するということも限度があります。(若くて元気で頭が良い人は別かもしれませんが)
かといって、たとえば、TYPO3チーム、Drupalチーム、XOOPSチーム、…のように、それぞれのCMS専門チームを編成してノウハウを蓄積するなんてことは、中小のウェブ屋にとっては、とても無理な話ですね。
つまり、色々なCMSの概要を理解して、お客様にあわせた最適なCMSを提案するということはできるとしても、色々なCMSの実装ノウハウを身につけて、お客様にあわせた最適なCMSを実装するということは、けっこう難しいというのが現実だと思います。(少なくとも、少人数・短期間では非現実的)
なので、自社が受注する可能性の高い分野のサイトに最も適したCMSを選んで、仕事を通じて実装ノウハウを蓄積していく。ということが重要になってきます。(最初は一つのCMSから始めて、二つ、三つと徐々に増やしても良いでしょう)
もし、苦手分野のサイトの受注があったら、潔く、その分野に精通している他の企業に頼みましょう。
こういった視点から考えると、一般的な企業サイト等の受注が多いのであれば、普通のサイトが普通に作れるCMSが(最初に選ぶには)理想的なCMSだと思います。(コミュニティサイトとか、何かのサービスサイトのような特別な機能が必要なサイトを受注することが多いようなウェブ屋は別ですが)
たとえ、機能豊富なCMSを使ったとしても、実際に使わない機能の方が多いと思いますので、後述しますが、勉強等の投資コストも含めて、トータルで判断することが必要ですね。
サポートが充実しているCMS
ある程度、自社でノウハウを蓄積したとしても、何から何まで、すべての問題を自力で解決するというのは、中小のウェブ屋では、まず無理でしょう。
そうなると、開発元やサードパーティ、コミュニティのサポートが必要になってきます。そういったサポートが充実していることが重要だと思います。
運用環境の選択肢が広いCMS
中小のウェブ屋では、レンタルサーバーやサーバーホスティングを利用することが多いかと思います。
最新バージョンのプログラム言語や特定のDBでしか動作しないとか、一般的ではない特定のモジュールや特別な設定が必要である等の動作環境が厳しいCMSは、コストが割高になったり、サポートが得られなかったりと、デメリットが多くなりがちですね。
トータルで見て、コストが適正であるCMS
有償CMSのライセンス費用はもちろんですが、ライセンスが無料であっても、サポート(こちらが受ける)費用やサーバー費用などのランニングコスト、勉強時間、書籍、勉強会等にかかる投資コスト、個々の制作や設定・カスタマイズにかかる作業コスト、マニュアル作成、お客様の研修、カスタマーサポート(お客様に対する)作業コスト等、自社の受注する案件に対して、適正なコストになるかどうかを判断することが重要ですね。
たとえば、管理画面の仕様上の制限があって、お客様の操作ミスを、こちらがその都度フォローしなければならないのであれば、カスタマーサポートの作業コストは大きくなります。
また、ちょっとしたテンプレートの変更であっても、ページを修正してお客様に確認していただき、修正内容をCMSに反映するという作業が煩雑であれば、変更作業にかかるコストが大きくなります。
それぞれ、お客様との関係、社内の作業フローや体制、CMSの特徴等が、うまくかみあうような選択をする、もしくは、仕事のやり方を変えてコストがあうようにする等が重要ですね。
お客様にあわせて、管理画面をカスタマイズできるCMS
お客様に更新していただくのですから、管理画面が使いやすいに越したことはありません。これは、お客様への研修やカスタマーサポートといったコストにも影響があります。
ただ、オープンソースCMSでは、ほとんどのCMSで、HTMLエディタに、TinyMCEやFCKeditorが使われていますし、商用CMSでも同様の機能が実装されていて、このあたりは大差ないような気がします。また、ログイン中に閲覧しているページから編集を始められるような機能は、多くのCMSが採用していますので、このあたりも大差があまりなくなっているような気がします。
ですので、基本的な機能で差が出てくるのは、新規にページを作る操作と、既存ページを検索して編集するというところになってくるかと思います。
これも、お客様によっては、高機能を望まれる方と、シンプルでいつも使う機能だけあれば良いという方と、別れてくるかと思いますので、このあたり、お客様に合わせてカスタマイズできるというのが、理想的かと思います。